若かりし日のバケットリスト(152)
- K

- 2023年8月15日
- 読了時間: 4分
更新日:2023年8月22日
以前、人生は実に思い通りにならない、という記事を書いた。
今回は、だがしかし、という出来事があったので、忘れないように書いていこうと思う。
妻と出会ったばかりで、いきなりスカイダイビングに誘ったら、
行くと即答してきたので一緒に飛び降りた。
そんな始まり方をしたので、
それからも突然の思いつきで二人で国内も海外も出かけた。
お互いにフットワークが恐ろしく軽かった。
で、毎日欠かすことなく一緒に泥酔していたある夜。
いつも「次はあれがしたい」「これがしたい」など話しているけど、
いつも翌日には全く覚えていないよね、ってなった我々は、
「いまメモっとこうよ」
「叶いそうなやつから叶えてしまおうよ」
ということになって、
その場にあった手帳だったかメモ帳だったかの、
B5の紙切れに、思いつくまま書きなぐった。
二人でケタケタと笑いながら、
明日朝にはふたりで「この紙何?」って言うんやろな、などと話しながら。
そんなわけなのでバケットリストというような大層なものではない。
叶えたいものランキングのかなり低いものもあったし、
20代後半に差し掛かり、そこそこ現実が見えてきたふたりの、
割りと具体的なものもあった。
自分が学生の頃とかに足繁く通っていた懐かしの店に一緒に行く、
とか。
実家の近くの絶景の場所を見せたくて、そこに一緒に行く、
とか。
クロアチアで青の洞窟に入る、
みたいなテレビで見て「キレー!!」って言いあった世界中の名所とか。
お金が一切かからないものから、
かなりの大金がかかるものまで、
表裏びっしりかなりの数になった。
そして、その日以降、叶えられそうなものから叶えては、
線を引いて消していった。
これって、
いま覚えば、
”最高の人生の見つけ方(The Bucket List)”
っていう、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの出てる映画と
やってることまるっきり一緒やけど、
あの映画は2007年なので、我々がメモに線を引いて消していった後の映画なのだ。
実に我々のほうが元祖なのが、今となっては驚きだ。
そして、結婚して月日は流れ、
そのメモを決して捨てていないことには自信があったけど、
2年に一度は引っ越しする飽き性で断捨離魔の我々は、
どこにいったのかわからなくなっていた。
なんせ、結婚してからリーマン・ショックなども経験し、
あぐらをかいていた自分は突如「明日の一万円がない」状態に陥ったり、
そこから脱出するために恐ろしく仕事にうちこんだり、
乳飲み子を連れてシンガポールに移住したり、
もうなんせバッタバタの何年間かがあったので、
そのメモのことにかまっている余裕が正直なかった。
余裕ができたころには、その存在を思い返すこともないまま時間が経っていた。
随分と時を経て、ふと、家族を連れて一時帰国のときに実家に立ち寄ってみたとき。
それまでそんなことを言ってこなかった母がその時突然、
「そういえば」的な感じで段ボール箱を引っ張り出してきた。
「シンガポールに引っ越すときに置いていったよ」と。
それは捨てられなかったものなどを詰め込んだ妻の段ボール箱だった。
実家に立ち寄ったときに何度も探したけど見つからなかった箱。
たしかそういうの入れた段ボール箱があったはずなんだけど、、と思いながらも、
勘違いだったかなぁ、、と忘れかけていた箱。
懐かしくもくだらない、だけども捨てられない、そういう思い出がたくさん出てきて、
ひとしきり感慨にふけった。
その中から妻がボッロボロのメモを発見した。
例のB5の紙切れだ。
鉛筆でズラーッと若かりし日のバケットリストが書いてあった。
「おぉぉぉぉ!」
「あったね、こういうの!」
「やっと見つけた!」
興奮しながら二人で見てみると、
半分くらいは線を引いて消してあった(叶えてあった)。
「結構叶えてるね。」
「ん?これ、達成してるんちゃう?」
もう何を書いたか覚えてないものがいっぱいあったけど、
なんと、
知らず知らずのうちに、叶えちゃっている。
忘れているのに、達成しちゃってる。
もちろん、クロアチアの青の洞窟に行くって書いたことを忘れていた。
でも、クロアチアの青の洞窟にも行ってちゃっかり感動しちゃってた。
二人で行くつもりが子供二人も一緒に行ったから200%の達成率だ。
感動は1000%くらいだった。
そして今もまだこのボロボロの紙切れは残っていて、
ひとつを残してすべてのリストに線が引かれている。
そのひとつは老後に消せばいいものだ。
そろそろ人生後半戦のバケットリストを書きなぐってみるのもいいだろう。
いろんなことを叶えた今なら、昔とは全く違う類のリストが出来上がるはずだ。
冒頭に戻って、
何が「だがしかし」なのか。
「人生は実に思い通りにはならない」
だがしかし、
「振り返ってみるとちゃっかり思い通りになっちゃってる」
ということだ。
予想のつかない実に面白い人生だけど、
思った通りの道順ではまったくなかったけど、
ちゃんと若い頃に思い描いたチェックポイントは外してない。
そういうことなんだな。

