シンガポールでデジタルバンクが続々と(119)
- K
- 2022年12月17日
- 読了時間: 5分
シンガポールでここ最近、
あらたにデジタルバンクがローンチし始めてる。
前回の子供の口座開設の件でも少し触れたが、
ヨーロッパを中心に2015年以降、
チャレンジャーバンクだのネオバンクだの呼ばれる、
決済サービス、ネットバンクができ始めた。
フィンテックという言葉も流行り、
いままでの銀行よりも遥かに便利な使い方ができることで、
利用者を拡大していった。
自分自身が一番最初に口座開設したチャレンジャーバンクはドイツのN26という、
送金サービスだった。
後に銀行になったらしいが、当初から銀行のようなものだった。
とにかくなんでもオンラインで完結できたし、
UIはわかりやすくおしゃれだし、
口座内に貯金箱のようなサブ口座も作れるし、
保険商品を契約することもできるし、
なんせアプリひとつでなんでも出来て当時感動したものだ。
Deutsche Bankの使いにくさからすると、
比較にならないくらい使いやすい。
後にRevolutがシンガポールに進出し、
順番待ちを経て口座開設にこぎつけた。
こちらは、アプリ1つで日本の友達に日本円が送金できて、
それだけで感動したものだ。
なんせ即時着金。
本来、日本に銀行からの海外送金で数百円程度の小銭を送金しようものなら、
手数料で総金額を遥かに超えてしまう上に、数日間着金しなかったわけだが、
手数料ゼロで数百円の日本円が即時に送れる。
チャットをするくらいの感覚で、だ。
Transferwise(現在はWise)も開設当時感激したものだ。
これもRevolutと同じくシンガポールでは個人では5000ドル以上のお金を口座内に持ち越せない。
これはRevolutもWiseも銀行ライセンスではなく決済システムのライセンスだからだ。
例えばDBSなどの銀行口座を紐づけておくと5000ドル超えるお金は自動で銀行口座に送られる。
だが、Wiseのいいところは、法人口座。
アメリカとかの法人でも口座開設出来てしまう。
そして法人口座の場合は5000ドルという上限がない。
これはもう、法人のマルチカレンシー口座を持っていることと遜色ない。
それどころか、それぞれの通貨の口座で現地の銀行口座を持っている、というレベルになる。
ユーロなら現地の銀行口座同様にIBANが持てるし、
ポンドならイギリスのソースコード、
米ドルならアメリカのルーティング番号でACH、
豪ドルならBSBコード、
といったように、各通貨それぞれ、現地で国内送金してもらえる口座がもらえちゃう。
Wiseに口座開設をするだけで世界中に口座開設しちゃったということになるわけだ。
アメリカの企業にInvoiceを発行し、国内送金でドルを支払いしてもらえるし、
スペインの友達に、ユーロの小銭を国内送金で送ってもらえるし、
イギリスのテナントに、ポンドで家賃を国内送金してもらうことができちゃう。
そしてアプリ内で非常に良いレートでSGDに変えて、
DBS銀行の口座にSGDを入れれば、バカみたいな国際送金手数料はかからない。
使わない理由がなにもない。
10年前では当たり前に不便だった国際送金や友達同士の割り勘払いが、
いまではチャットをするくらい簡単に無料でできてしまう。
チャレンジャーバンク、ネオバンクと言われるフィンテック企業サマサマだ。
そしてそんな中、2020年末あたりにシンガポールの金融庁MASから、
新たにデジタルバンクに銀行ライセンスを与えられ、
いま続々とローンチを迎える。
すでに口座開設可能なものは、例えば、
Trust Bank。
これはスタンダードチャータード銀行(シンガポール)と、
FairPrice Groupのパートナーシップによって作られたデジタルバンク。
FairPriceはシンガポールでそこら中にスーパーマーケットを展開しているので、
FairPriceで何かを買うときにTrust Bankのカードを使えば還元がでかい、
というメリットを打ち出している。
最近Trust Bankから来たメールによると、
金利もなかなかに優秀だ。

このように、FairPriceのメンバーは最大2.5%、ノンメンバーは最大2%の年利がつくとのこと。
いまや米ドルの定期預金が半年定期でも年利4.5%とかある時代だが、
この2.5%の金利がもらえる預金は定期預金ではないのでロック期間もない。
SGDで、かつ普通預金で、この金利はなかなか香ばしい。ただし75,000ドルまで。
シンガポールの銀行は、
Singapore Deposit Insurance Corporation’s (SDIC) という預金保険機構の、
Deposit Insurance (DI) という制度に加入している。
これによって銀行破綻時に預金者の預金は75,000ドルまで保証されるので、
このTrust Bankの預金75,000ドルはリスクフリーだと言えるだろう。
デジタルバンクらしく口座開設はすべてアプリで完結。
ビデオコール等もなくサクサクっと終わってしまう。
他にはGXS Bank。
こちらはまだ紹介制となっていて、順番待ち状態。
タクシー配車アプリとして名を馳せたGrabと、
シンガポールのドコモのようなSingtelによる、
ジョイントベンチャーだそうだ。
そもそもGrabはアプリ内でGrab Payという決済システムがあるし、
SingtelはSingtel Dashというアプリで決済サービスを展開している。
それらがフルバンキングライセンスをとったということになる。
こちら日本にApple IDではアプリが出てこないので、
シンガポールのAppleか、もしくはアンドロイドならアプリがダウンロード可能だ。
こちらも使えるようになれば使ってみたい。
他にはMariBank というものも出来るらしい。
こちらはコロナ禍で株価爆上げしたSea Limited が展開するとのこと。
あとは、
デジタルフルバンクではない、Digital Wholesale Bank というライセンスらしい銀行が2つ。
ひとつはANEXT Bank。
かのAnt Group が展開するとのこと。
すでにアプリはダウンロード可能だ。
こちらは商業銀行なので個人的には使うことはないかなと。
もうひとつはGreen Link Digital Bank。
Greenland Financial Holdings Group と Linklogis Hong Kong という会社のジョイントベンチャーらしい。
Credit Bureau Singapore(CBS)によると、
これら5つのデジタルバンクは、
シンガポールの金融機関31社とともにCBSに加盟したとのこと。
さて、この人口の少ない狭い狭いシンガポールで、
これだけたくさんのデジタルバンクが出来て、
市場の取り合いは大丈夫なのかと思うものの、
それぞれどんだけ便利なサービスを提供してくれるのか楽しみだ。
まぁすでにDBS銀行が相当なデジタルバンクになっていて、
アプリも優秀すぎるから、相当じゃないと驚かないけども。
