Web3ウォレットは良くも悪くもデジタルタトゥー(131)
- K

- 2023年3月8日
- 読了時間: 4分
以前、「ヤクザと家族」という映画を観た。
ヤクザをやってた人が罪を償って社会復帰してもまともに働くことが出来ない、
という内容だった。
デジタル社会の今、
自分の過去の行動は、デジタル上に残ってしまって、
基本的には永遠に消えない。
Googleが忘れられる権利(right to be forgotten)を巡る戦いをしていた記憶もあるが、
実に生きづらい世の中になったと思う部分もある。
例えば、若い頃は馬鹿やってなんでも失敗すればいい、
みたいな昔の言い伝えは、もう今では割と危険だ。
全てが残る。
もちろん、スシローペロペロくんやバイトテロ系の人がやっているような、
気持ち悪すぎる行動は異常だと思うし、
自分の常識では処理できない行為だと思う。
が、自分も少年期に人に偉そうに言えるような行動をしていたのかというと、
全く自信はない。
スポーツに励み、学業に励み、表面は整えつつも、
スポーツ帰りの夜中に、
高校生の先輩に誘われて、
無免で原付きに乗って、原付きに花火を挿して、
モールの屋上駐車場を走り回ったりしていた中学生時代の記憶はある。
今の時代にこれをやっていた場合、
おそらく仲間内の誰かが面白がってTik tokにアップし、
炎上していただろう。
いまのスシローペロペロくんなどは、
大したことないと思って面白がってやっていた行為が、
立派なデジタルタトゥーとなって、
これからの未来に付きまとう。
これは実にマイナススタートだ。
逆にデジタルタトゥーが良い方に働く場合もあるだろう。
ずいぶん前だが、
中国のアリババグループのアリペイに搭載されている芝麻信用(Zhima Credit)が、
「学歴」「勤務先」「資産」「返済」「人脈」「行動」
(ショッピング・金融商品の利用状況や公共料金支払い状況)などの、
指標の組み合わせで計算し、
利用者の信用スコアを出していて話題になった。
これはデジタルタトゥーが良い方に働くやつだ。
人は高い信用スコアを得るために、
良い行動をとる。
アリババでオンラインで物を売るとなると、
人を騙す輩も出てきて当然なわけだが、
評価が下がれば物は売れない。
物が売れなければ騙すことも出来ない。
詐欺をするつもりでやってきた輩が、
まずは評価を上げようとまっとうな行動をし、
そうしているうちに非常に高評価な売り手となり、
詐欺するより儲かるようになったのでまともにビジネスをやり続けた、という話が話題になっていた。
人に見られていることで、
必然的に良い行動を取ってしまう。
これと似たような感覚を持ってしまうものに、
Web3ウォレットがある。
Web3ウォレットで動かした暗号通貨やNFTなど、あらゆる行動は、
全てブロックチェーン上に刻まれる。
そしてそれはブロックチェーンにある以上、
世間に対して常にオープンにされている。
プライバシーという概念がそこにはない。
よって、そのウォレットが作られて以来、
どのような行動を取って来たのかは、
改ざん不可能な履歴書のようなもの。
その人がどんな人物なのかが見えてきてしまう。
よって、ウォレットの履歴を見ることで、
一定の条件を満たしていると、
Airdropのような、例えば新しい暗号通貨がもらえたりする。
これは結構ばかにならないので、
人々はプロジェクトに貢献しようと、良い行動を取ってしまうわけだ。
そして今、それが日本国内のNFT市場でも起きている。
特定のNFTを持っているウォレットに、
新しく出るNFTを購入する権利を与えます、という、
AL(Allow List)が与えられる。
人々はこのALが欲しいので、NFTプロジェクトに取って良い行動を取ることになる。
例えば、そのプロジェクトのNFTをガチホするとか、
二次流通で購入するとか。
さらにそこでもらったALを使って、優先的に新しいNFTを購入したとして、
それをすぐに売り抜けるとめちゃ儲かるのだが、
みんながそれをやると当然値崩れして価値のないプロジェクトになってしまう。
だから、プロジェクト側としては、その新しいNFTも願わくばガチホして欲しい。
もちろん全員が売らなければ値段すらつかないので、
ある一定の数は二次流通で回ってほしいと願うものの、
受給のバランスを考えて徐々に徐々に時間をかけて流通してくれるのがベストだろう。
となると、
プロジェクト側はALを利用して購入したウォレットが即売りしたかどうかを見ることになる。
即売りしていた場合は、次回以降別のALを与えるようなことはしない。
ちゃんとガチホして大切にしてくれるウォレットにALを与えた方がいいに決まっているからだ。
これで、気に入ったプロジェクトに貢献するために人々は良い行動を取り続け、
プロジェクト側は良い行動を取り続けた人に見返りを与え続ける。
実にわかりやすい信用の証。
こっちの方にデジタルタトゥーが使われるのは非常に合理的だ。
皆Web3ウォレットの履歴書をキレイにするために、
日々良い行動を取っていく。
いや、むしろもう履歴書そのものだ。
Web3サービスを展開するプロジェクトが採用をするときには、
そのウォレットの履歴をみれば、どれほど精通しているかがわかってしまうのだから。
経歴詐称は出来ないし、過去にやらかした行為も隠せない。
良くも悪くもデジタルタトゥー。



